脚の付け根が痛い(1週間以上前から)
結果をもとに適切な病院・診療所を提案します
脚の付け根が痛い(1週間以上前から)の基礎知識
概要
慢性的にあしの付け根が痛む人は少なくありません。特に高齢者になると、多くの人が大なり小なり抱えている症状です。あしの付け根の痛みは股関節に問題があることが多く、変形性股関節症という病気が主な原因です。また、鼠径ヘルニア(脱腸)や、大腿ヘルニアといったお腹の病気が原因となることもあり、この場合、あしの付け根に目立った膨らみを伴います。その他では皮膚の病気も症状の原因になります。
あしの付け根が痛む人はしばらく様子をみることも可能ですが、なるべく早く詳しく調べて原因を明らかにしておくことをお勧めします。原因が分かれば治療やセルフケアなどで対応することができるからです。
原因によって適切な受診先は異なりますが、まずは整形外科か内科で相談してみてください。痛み止めなどの治療を開始してくれますし、必要に応じて、他の診療科を紹介してくれます。
原因とメカニズム
股関節に問題が発生すると、足の付け根に痛みを感じます。また、多くはありませんが、内臓の病気や、皮膚の病気も原因になります。
考えられる病気
主な原因は変形性股関節症という病気です。他にもさまざまな原因が考えられます。
変形性股関節症
変形性股関節症は、加齢や病気、発達障害によって股関節に変形や痛みなどが生じた状態です。軟骨の減少が原因なので、自然治癒することはなく、症状は少しずつ悪化していきます。
坐骨神経痛
坐骨神経痛は坐骨神経(腰骨から出て足に向かう神経)が何らかの原因によって圧迫され、痛みやしびれなどの症状が現れた状態です。足の付け根に症状が出ることがあります。
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアはお腹の中の臓器が鼠径部(足の付け根辺り)から飛び出した状態です。脱腸と呼ばれることもあります。男性に多いことが知られ、足の付け根の膨らみからみつかることが多いです。鼠径ヘルニアで痛みが出た人は嵌頓(かんとん)という状態かもしれず、もしそうであれば、治療を急いだほうがよいサインです。なるべく早く受診してください。
大腿ヘルニア
鼠径ヘルニアと似ていて、大腿管という隙間からお腹の中の臓器が飛び出る病気です。鼠径ヘルニアが男性に多いのに対して、大腿ヘルニアは女性に多いことが知られています。痛みがない状態では様子をみることができますが、痛みがあると、鼠径ヘルニア同様に嵌頓(かんとん)という危険な状態かもしれません。痛みがある人はなるべく早く受診をしてください。
湿疹
皮膚に起きた炎症の総称です。かゆみや赤み、かさつきといった症状が現れ、悪化すると痛みを感じることがあります。
蜂窩織炎
皮膚はいくつもの層が重なり合ってできています。一番外側の層を表皮と呼び、その直下に炎症が起こるのが蜂窩織炎です。蜂窩織炎になると痛みや赤み、熱感(熱を帯びること)といった症状が現れます。
粉瘤
皮膚の下に袋状のスペースができ、そこに老廃物が溜まってコブのようになったものを粉瘤と言います。無症状であることが多いのですが、感染が起こると痛みが現れます。
怖い病気
鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアが嵌頓(かんとん)という状態になると、ヘルニアの中にある臓器が締め付けられてダメージを受けてしまうため、危険な状態と言えます。ダメージの程度が重いと、嵌頓した臓器を手術で取り除かなければなりません。
また、蜂窩織炎も症状が重くなると、全身に感染が広がってしまうので、怖い病気だと言えます。
受診の目安
軽い痛みであれば、しばらく様子をみても良いです。しかし、症状が改善しないようであれば、良くなる可能性は低いので、受診をしてください。また、痛みが今までにないくらい強くなった人や、鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアの可能性がある人は、緊急で対応をしなければならない状態かもしれないので、すみやかに受診をしてください。
診療科
原因によって適した診療科が異なります。なるべく、上で挙げた「考えられる病気」と対応させて説明してあるので、参考にしてみてください。
整形外科
変形性股関節症や坐骨神経痛の治療を受けられます。他の病気との区別もしてもらえるので、かかりつけがあったり近くにあれば、まず最初に受診してみると良いです。
内科
周りに整形外科がない人は内科で相談してください。症状に対する治療をしてもらえますし、必要に応じて適切な診療科を紹介してもらえます。
救急救命科
鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアと診断を受けている人が、腹痛や足の付け根に強い痛みを感じた場合には、ヘルニアが嵌頓している可能性があり、緊急での処置が必要になります。夜間や休日であれば消化器外科に直接受診するのは難しいので、救急救命科を受診してください。
消化器外科
消化器外科では鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアの治療を受けられます。ヘルニアであれば嵌頓状態になる前に治療の必要性を判断してもらったほうが良いです。痛みだけではなく膨らみがある人は消化器外科への受診をお勧めします。
皮膚科
湿疹や蜂窩織炎、粉瘤といった病気の治療を受けられます。皮膚の色が変わっていたり痒みが強い人は皮膚科を受診してください。
検査
足の付け根に痛みがある人には、主に次の診察や検査が行われます。
診察
問診(お医者さんと患者さんの対話)や身体診察が行われます。身体診察では身体を観察したり、聴診器で体内の音を聴いたりします。
レントゲン検査
X線を使った検査です。変形性股関節症や坐骨神経痛の可能性がある人に行われ、骨や関節の状態を調べられます。
超音波検査(エコー検査)
高い周波数の音波を使った検査です。大きな音がするわけでもなく、痛みがあるわけでもなく、負担なく行うことができます。鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアの可能性がある人に行われます。
CT検査
レントゲン検査と同様にX線を使った検査です。使用するX線の量が多いので、レントゲン検査より被ばく量が増えますが、その分、身体の中を詳細に調べることができます。主に鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアの可能性がある人に行われます。
MRI検査
磁気を利用した検査なので、被ばくの心配はいりません。CT検査に比べて、軟骨や靭帯の状態がよくわかるので、変形性股関節症や坐骨神経痛の可能性がある人に行われます。
治療
治療は原因によって異なります。変形性股関節症の程度が重ければ、手術が検討されますし、湿疹や帯状疱疹のような皮膚の病気であれば薬物治療が中心となります。原因が分からなければ何とも言えないので、医療機関で調べてください。
セルフケア
原因によってセルフケアは変わります。
主な原因である変形性股関節症であれば、体重管理が症状の緩和に役立ちます。体重が標準体重を上回るほど、股関節への負担が増すからです。また、スポーツなど激しい運動をしている人では、練習での負荷やフォームなどを確認してみるのも、負担軽減につながるかもしれません。