脚の付け根にしこりやできものがある
結果をもとに適切な病院・診療所を提案します
脚の付け根にしこりやできものがあるの基礎知識
概要
あしの付け根のしこりやできものは病気のサインかもしれません。皮膚の感染・炎症や、脂肪腫、腫瘍、腫れたリンパ節などがしこりの原因として考えられます。
しこりが一時的なものであれば問題はありませんが、しこりが消えずに硬くなってきたり、痛みを伴う人は受診してください。まれですが、悪性腫瘍や膠原病などが背景に存在することがあるので、単なる皮膚や筋肉のトラブルだと自己判断しないことが大事です。
最初の相談先としては、皮膚科や内科が適しています。他では、感染症内科や血液内科、泌尿器科などの病気も原因になりますが、必要に応じて、皮膚科や内科から紹介してもらえます。
原因とメカニズム
足の付け根にある構造物の異常がしこりやできものの原因になります。具体的には、皮膚や筋肉・脂肪などに生じる感染や炎症、腫瘍化などです。また、足の付け根の筋肉が弱くなり腸が飛び出してくる鼠径ヘルニアをしこりとして感じることがあります。
考えられる病気
足の付け根にはさまざまな構造物があるため、原因がいくつも考えられますが、よく見られるものとしては、次のものがあります。
ヘルニア(鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア)
ヘルニアとは、体の中の臓器が本来あるべき場所から飛び出した状態を指します。足の付け根周辺では鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアが起こります。
■鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアは脱腸のことです。加齢などにより、足の付け根周辺の筋肉が弱くなると、お腹の中の腸が弱くなった筋肉を押して、足の付け根が膨らんで見えます。その膨らみは大きくなったり小さくなったりすることがあります。症状が特になければ様子見することができますが、腸の血流が悪くなりやすい状態では手術が必要です。鼠径ヘルニアの可能性がある人は、医療機関で相談してください。
■大腿ヘルニア
お腹の中の臓器が大腿管という構造物を通って、飛び出した状態です。鼠径ヘルニアに似ていますが、鼠径部の足側に膨らみをつくります。大腿ヘルニアは鼠径ヘルニアよりお腹の中の臓器に影響を与えやすいことが知られているので、必ず医療機関を受診してください。膨らみ以外に痛みや吐き気の症状がある人は緊急での受診を検討してください。
皮膚・皮下組織の異常(粉瘤・脂肪腫など)
皮膚や皮下組織の異常もしこりやできものの原因になります。主なものは粉瘤と脂肪腫です。
■粉瘤
皮膚の下に袋状のスペースができ、その中に皮膚の老廃物が溜まる病気です。大きくなると、しこりやふくらみとして自覚するようになります。感染を起こしやすく、痛みやかゆみの原因になります。
■脂肪腫
脂肪細胞が腫瘍化したものです。良性腫瘍に含まれるので、命に危険を及ぼすことはありません。脂肪腫の特徴は柔らかな感触で、周りとの境界が分かりやすいことです。脂肪腫は様子をみることができますが、他の病気の可能性もあります。自己判断せずに正確な診断を受けて判断することをお勧めします。
感染症(梅毒・クラミジア・性器ヘルペスなど)
梅毒やクラミジア、性器ヘルペスなどの性感染症にかかると、足の付け根付近のリンパ節がその影響を受けて大きくなり、しこりやできものとして感じるようになります。性感染症であれば、排尿時の痛みや、膿が混じった尿、性器の異常などの症状も現れます。それぞれの病気で症状が少しずつ異なるので、詳しくはそれぞれのリンク先を参考にしてください。
怖い病気
多くはありませんが、足の付け根のしこりやできものが、命に影響を及ぼす病気によるものであることもあります。
蜂窩織炎
皮膚の下にある蜂窩織という部分に炎症が起こった病気です。その原因のほとんどが細菌による感染症で、皮膚にできた傷から細菌が侵入します。皮膚が赤く腫れ上がり痛みを伴い、進行すると深部軟部組織感染症(壊死性筋膜炎、ガス壊疽)という危険な状態になるので、症状に当てはまる人は早めに受診してください。
悪性腫瘍(陰茎がん・肛門管がん・悪性リンパ腫・乳房外パジェット病など)
悪性腫瘍は「がん」のことです。がんは近くのリンパ節に転移する性質があり、がんが転移したリンパ節は大きくなります。足の付け根のしこりやできものがリンパ節であった人では、がんの可能性も調べられます。足の付け根のリンパ節が腫れやすいがんの種類としては、陰茎がん・肛門管がん・悪性リンパ腫。乳房外パジェット病などがあります。
受診の目安
あしの付け根のしこりやできもの以外にも症状がある人は受診してください。病気によっては、しこりやできものの出現と違ったタイミングで他の症状が出ることがあるので、遅れて気になる症状が出た人も受診してください。
他に症状がない人は様子を見ることもできますが、1週間たっても変化がなければ、医療機関で調べてもらった方が良いです。
診療科
病気によって適した診療科は異なりますが、もし違っていれば、適切な診療科を紹介してくれるので、次の診療科を受診してください。
皮膚科
皮膚や皮下の診療に長けています。蜂窩織炎や脂肪腫、粉瘤といった病気が心配な人に適した診療科です。
内科・感染症科
感染症であれば内科や感染症科で治療が可能です。蜂窩織炎や性感染症が心配な人に適しています。
泌尿器科
尿路や男性器の病気の診療を受けられます。陰茎に異常があったり、性感染症の心配がある人に適しています。
外科・消化器外科
鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアは外科や消化器外科で治療をします。症状が当てはまる人は受診してください。
検査
可能性が高い病気によって検査は変わってきますが、次のものが考えられます。
尿検査
主に性感染症が疑われる人に行われます。
血液検査
感染症が疑われる人に行われます。全身状態の把握に有用な検査なので、手術などが必要な人にも行われることがあります。
超音波検査
音波を使った検査で、痛みはなく被ばくすることもありません。しこり・できものの内部を観察することができます。
CT検査
放射線を使った検査です。体の中を詳しく調べることができ、超音波検査より多くの情報を得ることができます。ヘルニアや悪性腫瘍などが考えられる人に行われることが多いです。
治療
原因によって適した治療が異なります。例えば、ヘルニアが原因であれば手術が有力な選択肢になりますし、感染症が原因であれば抗生物質(抗菌薬)で治療を行います。悪性腫瘍であれば、手術だけではなく放射線治療や抗がん剤治療を選ぶこともあります。
セルフケア
しこり・できものの原因によって予防方法が変わってくるので、まずその正体を突き止めなければなりません。性感染症や蜂窩織炎などは感染リスクを下げる方法があるので、お医者さんに相談してみてください。また、ヘルニアにも再発や悪化させないための注意点があるので、受診した時に聞いてみるとよいです。