膝が動かない、動かしにくい
結果をもとに適切な病院・診療所を提案します
膝が動かない、動かしにくいの基礎知識
概要
膝が動きにくい場合、膝関節に問題が発生していることが多いです。具体的には変形性膝関節症や、膝靱帯損傷、ロコモティブシンドローム、筋断裂(肉離れ)などです。この中でも多くの人に起こるのが変形性膝関節症で、膝の軟骨がすり減っていくことが原因です。まれにパーキンソン症候群(あるいはパーキンソン病)も原因になりますが、膝以外にも症状が現れることが多いので、区別は比較的しやすいです。
膝の動かしづらさを放置している人は少なくありませんが、一度は詳しく調べてもらうことをお勧めします。原因が分かれば対処がしやすくなるからです。変形性膝関節症であれば、機能を維持するためのアドバイスをお医者さんや理学療法士から受けられます。
膝の動かしづらさを相談したい人は整形外科を受診してください。もし近くになければ内科でかまいません。症状に対する治療はしてもらえると思いますし、必要に応じて整形外科を紹介してくれます。
原因とメカニズム
膝が滑らかに動くには膝関節の軟骨や靱帯、筋肉、神経などが正常である必要があります。反対の見方をすると、これらのどれかに問題があれば膝が動かしづらくなります。
考えられる病気
関節の病気が原因であることが多いのですが、まれに神経の病気も原因になるので、調べてはっきりさせておくが重要です。
変形性膝関節症
膝関節の軟骨がすり減ることによって、膝関節の変形が起こる病気です。変形性膝関節症は、高齢女性に多く、加齢とともに発症する人が増えていきます。膝の動かしにくさに加えて痛みをともなうことが多いです。
ロコモティブシンドローム
筋肉や骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器の障害によって移動能力が低下した状態のことを指します。ロコモティブシンドロームになると、関節の動く範囲が狭まったり、筋肉や関節の痛みを伴うことがあります。
膝靱帯損傷
膝には4つの靱帯(前十靱帯・後十字靭帯・内側側副靱帯・外側側副靱帯)があります。膝靱帯損傷はそのいずれかまたは複数の靱帯が損傷した状態を指します。スポーツ外傷や交通事故で発生することが多いのですが、高齢者では日常生活での負荷でも起こることがあります。
坐骨神経痛
坐骨神経は腰骨から出て足に向かう太い神経です。椎間板や筋肉などによって、坐骨神経が圧迫されると、足がしびれたり、膝の動きが悪くなったりします。こうした症状が現れた状態を坐骨神経痛と言います。
廃用症候群
廃用症候群とは、身体の活動性が落ちた状態(寝たきり)が続くことです。肉体および精神的な機能の低下が起こり、その結果として様々な症状が現れることを指します。寝たきりやそれに近い状態で過ごせば、関節が硬くなり膝が動かしにくくなります。
筋断裂(肉離れ)
筋肉が激しく損傷した状態を筋断裂といい、いわゆる肉離れのことです。膝周囲の筋断裂は膝の動きに悪影響を与えます。
偽痛風
関節内でピロリン酸カルシウムという物質が結晶化し、炎症を起こす病気です。膝関節にも症状が現れることがあり、激しい痛みと関節の動かしにくさなどが現れます。痛風に症状が似ているので、偽痛風という名前がついています。
パーキンソン病・パーキンソン症候群
ドーパミンという物質が不足または上手く働かないため、主に身体の動きに変調が現れる病気です。パーキンソン病・パーキンソン症候群でよく現れる症状として、動作緩慢やすくみ足(第一歩をなかなか踏み出せない、歩き出すまでに時間がかかる)があります。この症状が膝の不調によるものと見えることがあります。
怖い病気
症状が膝だけであれば、命を脅かすような怖い病気が隠れている可能性は低いです。足全体が動かしづらかったり、発熱をともなったり、他にも症状があると、脳梗塞や脳出血などの怖い病気の可能性があります。膝以外にも目立った症状がある人はすみやかに受診をしてください。
受診の目安
症状が膝だけに留まっていれば、急いで受診する必要はありません。膝の動かしづらさが日常生活に支障をきたしている人や、気になって頭から離れない人は受診をお勧めします。原因がはっきりするだけで、気持ちが軽くなりますし、医療機関では治療だけではなく、日常生活での注意点やセルフケアなどを教えてくれます。
診療科
膝の動かしづらさは整形外科や内科で相談してください。
整形外科
膝関節の状態を詳しく調べてくれます。手術が必要かどうかの判断もしてくれます。
内科
周りに整形外科がなければ、内科で相談してください。痛みがある人には鎮痛剤を処方してくれますし、必要に応じて整形外科の紹介もしてくれます。
検査
原因を特定するために診察や検査が必要です。
診察
問診(お医者さんと患者さんの対話形式による診察方法)や身体診察が行われます。身体診察では、お医者さんが患者さんの膝を曲げたり伸ばしたりして、膝の状態を確かめます。診察ではレントゲン検査やMRI検査の必要性も判断されます。
レントゲン検査
関節の大まかな状態を知ることができます。ほとんどの整形外科ではレントゲン検査が行えます。
MRI検査
磁気を利用した検査です。どこででも受けられる検査ではなく、限られた医療機関でのみ受けられます。MRI検査を強く希望する人はあらかじめ受けられるかどうかを尋ねておいてください。
関節液検査
膝に液体が溜まっている人に行われる検査です。関節に注射器を刺して中に入った液体を抜き出し、その成分を分析します。膝の水分を抜き出すだけでも症状を和らげる効果があるので、関節液検査には治療の側面もあります。
治療
変形性膝関節症や膝靱帯損傷であれば手術が検討され、筋断裂であれば安静にして自然治癒を待つ、というように、原因によって治療法が異なります。また、根本的な治療と並行して、症状を和らげる治療(鎮痛剤やリハビリテーションなど)も行われます。
セルフケア
膝は体重の負荷が強くかかる部位です。標準体重をオーバーしている人は、減量することで症状が和らぐ可能性がありますので、お医者さんや管理栄養士さんと相談して、食事療法や運動療法に取り組んでみてください。また、自宅でできるリハビリテーションのメニューもあるので、理学療法士から教えてもらってください。