胸が痛い・苦しい(数日以内)
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胸が痛い・苦しい(数日以内)の基礎知識
概要
急な胸の痛みを起こす原因は、心臓や肺の病気が関わる重大なものから、様子をみてかまわない軽いものまで様々です。高齢、高血圧、糖尿病、コレステロールが高い、喫煙歴がある、などは特に危険性が高い病気を持っている人の特徴です。
今まで感じたことがないような不自然な痛みや強い痛みがある人は、速やかに医療機関を受診してください。主な診療科は一般内科で、循環器内科や呼吸器内科が特に専門です。極めて症状が強い人は、夜間休日に救急科での診察となるかもしれません。COVID-19流行による受診制限などもあるので、事前に電話で問い合わせて受診してください。
原因とメカニズム
胸の痛みは、様々な臓器から発生します。
・心臓
・大動脈などの血管
・肺、気管支、胸膜
・食道、胃、十二指腸、膵臓、胆嚢
・皮膚、筋肉、肋骨、肋軟骨、神経
・乳房
心臓や大動脈、肺の病気など、胸の痛みには怖い病気が隠れていることがあります。
一方で、検査をしても特に異常が検出されないような痛みのことも多いです。若くて持病がない人の場合、ほとんどがこのような原因のハッキリしない胸の痛みです。
考えられる病気
胸の痛みを生じる病気は多く、全てを列挙することはできません。以下では、心臓や肺のトラブルを中心に、よくある病気・注意すべき病気を紹介します。
肺炎・胸膜炎
肺炎・胸膜炎は細菌やウイルスが肺で炎症を起こしている状態です。数日単位で症状が悪化します。38度以上の高熱を伴うことが多いです。自然に治ることも少なくありませんが、命に関わることもあります。肺の中には痛みを感じる神経が乏しいので、肺を覆う胸膜まで炎症が波及して初めて胸の痛みを自覚することが多いです。
プレコーディアル・キャッチ症候群
プレコーディアル・キャッチ症候群は若い人の心臓周囲に突然起こる鋭い痛みが特徴です。指でさし示せるような狭い範囲に痛みが限定されることが多いです。経験する人が多い症状ですが、短時間で自然に治り、特に治療は必要ありません。
帯状疱疹
帯状疱疹はウイルスが原因で、皮膚に帯状の赤い水疱や発疹ができます。ピリピリとした痛みを伴うことが多いです。高齢者や、何らかの病気や治療で免疫が十分に働いていない人で起こりやすいです。早期に治療することで、痛みが長引くのを防ぎやすくなります。
急性心膜炎、急性心筋炎
急性心膜炎、急性心筋炎はウイルスが心臓に感染するなどして炎症を起こした状態です。自然に治ることも少なくありませんが、心臓がうまく動かなくなり生命に関わることがあります。
逆流性食道炎
胃酸の逆流により胸焼けが起こります。これにより、胸が痛いと感じる人もいます。
怖い病気
肺炎や胸膜炎、急性心膜炎・心筋炎も数日単位で命に関わることがあるため、怖い病気と言えます。以下では、数時間単位で命に関わるような、より危険な病気を挙げていきます。
心筋梗塞、狭心症
心筋梗塞や狭心症は心臓に栄養を送る血管が詰まってしまう病気です。急に心臓が動かなくなり、命に関わることが少なくありません。
肺塞栓症
肺塞栓症は心臓から肺に血液を送る血管に血栓が詰まってしまう病気です。詰まる血栓が大きいと、短時間で命に関わることがあります。
急性大動脈解離
大動脈解離は身体の中で最も太い血管である大動脈が裂けてしまう病気です。胸というよりは背中に激痛が走ることが多いです。
気胸
気胸とは肺が空気漏れを起こし、パンクしてしまった状態を指します。特に病気のない若い人でも急に発症することがあります。空気漏れの程度がひどいと、緊張性気胸呼ばれる、より急を要する危険な状態になりえます。
受診の目安
今までに感じたことがないような胸の痛みには、重大な病気が隠れていることが少なくありません。そのため、基本的には速やかな医療機関の受診をお勧めします。以下のような時は、危険な病気の可能性が高いので、より速やかな受診が必要です。
・過去に経験がないような強い痛み
・急激に発症した痛み
・強い息苦しさ
・38度以上の発熱
・意識が混濁
・水も飲み込めないほどの喉の痛み
若くて持病がない人では、重大な病気が見つかる頻度は多くありません。一方で、高齢、高血圧、糖尿病、コレステロールが高い、喫煙歴がある、などの特徴がある人は、重大な病気がしばしば見つかります。
診療科
急な胸の痛みは重大な症状なので、内科のお医者さんであれば、まずはどのような状態かあたりをつけたり応急処置をしてくれることが多いです。また、循環器内科や呼吸器内科などより専門的な医療機関に必要に応じて紹介してくれます。
症状が急であり、夜間休日の受診になってしまう場合などは、救急外来の受診・救急車での受診もやむを得ません。しかし、基本的には救急外来は応急処置を行う場なので、しっかりと継続的に診てもらうには平日の日中に内科を受診した方がよいです。COVID-19流行による受診制限などもあるので、事前に電話で問い合わせて受診してください。
内科
息切れの程度が軽い、いつも診てもらっているお医者さんである、家から近い、などの理由があればまずは一般内科の受診で構いません。必要に応じて、呼吸器内科や循環器内科などより専門的な医療機関に紹介してくれます。
循環器内科
主に心臓を専門にする診療科です。胸の痛みが強い人は最初から循環器内科を標榜している診療所やクリニックを受診するのもよいと思われます。必要に応じてより大きな病院や他の診療科に紹介してくれます。
呼吸器内科
空気の通り道(気道)や肺の病気を専門にする診療科です。息苦しさや発熱など、肺炎を疑うような症状が強い人は、はじめから呼吸器内科を標榜している診療所やクリニックを受診するのもよいと思われます。必要に応じてより大きな病院や他の診療科に紹介してくれます。
検査
急な胸の痛みに関連した検査には、次のようなものがあります。
心電図検査
急な胸の痛みの原因が心臓にあるかどうかを調べる際にまず行われる検査です。多くの医療機関で行われています。
胸部X線(レントゲン)検査
肺炎、胸膜炎、気胸など肺の病気を簡単にチェックすることができます。
血液検査
心臓がダメージを受けているか、血栓が出来ていそうか、炎症がありそうか、など全身の情報を広く浅く得ることができます。
胸部CT検査
レントゲンでは写らない細かな病気を診断するためにはCT検査が行われます。放射線被曝や検査費用の問題もあるため、重大な病気の可能性が考えられる人以外には必ずしも行われません。
心臓超音波(エコー)検査
身体の表面から心臓の様子をリアルタイムで観察することができます。循環器内科などでしばしば行われる検査で、心筋梗塞、狭心症、肺塞栓症などが疑われる際に行われます。
パルスオキシメータ
指などに機器を取り付けることで、簡単に血中の酸素飽和度(SpO2)を測定できます。年齢や元々の状態によって異なりますが、SpO2 が93%以下くらいであれば何らかの酸欠になる病気が隠れていることが多いです。また、既に酸欠になっているため、入院を含めた積極的な治療が必要なことが多いです。
治療
原因の病気がはっきりとしている人では、その病気の治療が大切です。胸の痛みそのものを抑える薬はあまり使われませんが、プレコーディアル・キャッチ症候群などあまり心配の要らない痛みが原因であれば、希望に応じて痛み止めなどが処方されます。
セルフケア
急な胸の痛みには危険な病気が隠れていることがあるので、基本的にはセルフケアで済ませず医療機関を受診してください。特に、高齢、高血圧、糖尿病、コレステロールが高い、喫煙歴がある、などの特徴がある人は安易に自己判断で様子見をしないでください。